MSX-ENGINEとは、ホームコンピューターとして製品化されたMSX用途向けに設計されたカスタムチップの名称。
MSX1相当向けにはT7775やT7937、MSX2以降の用途向けにはT9769(MSX-ENGINE2(別名MSX2-ENGINE))があり、共に東芝が製造を担当した。CPUを内蔵しないMSX-SYSTEMという別のチップも存在する。
特徴
- T7775 MSX-ENGINE
- MSX1の機能を1チップに凝縮したCMOS-LSI。
- クロックジェネレーターを内蔵し、RUNモード、IDOLモード、HOLDモードなどの各モードをプログラムから設定可能。
- T7937
- Z80A相当のCPU、TMS9918相当のVDP、PSG(AY-3-8910相当)、PPI(i8255相当)を内蔵。
- スーパーインテグレーション/スーパーマクロセルライブラリーによる設計、1.5um設計ルール、チップダイサイズ10.5×8.6mm、素子数約41000。
- パッケージは144ピンQFP
- T9763
- パッケージは144ピンQFP
- T9769 MSX-ENGINE2(もしくはMSX2-ENGINE)
- Z80相当のCPU、AY-3-8910A相当のPSG、その他各種ポートやインターフェース等、MSXを構成するのに必要な周辺回路をワンチップ化。
- 主にパナソニック製や三洋電機製のMSX2と、MSX2 、MSX turboRで使用された。
- CPUは3.58MHz駆動で使用しているが、パナソニック製のMSX2 では同社のカスタムチップとの協調により5.38MHz駆動させることも出来た。
- turboRでは、本LSIのほかにシステムLSIとしてS1990が搭載され、R800の動作中にはT9769内部のZ80A相当CPUの動作が停止する排他制御が行われた。
- また、これらに内蔵された、AY-3-8910相当の回路は、東芝のハードマクロセル名はSM7766Aと呼ばれ、ソフトウェアから見た場合は、互換品であるものの、ハードウェアエンベロープの周期などがAY-3-8910とは異なる。
位置づけ
本チップのような統合LSIの登場により、従来は74シリーズなどを多数使用して構成しなければならなかったMSX内部の論理回路や周辺LSIがほぼワンチップに置き換えられ、安価かつ小型にMSX2が製造出来るようになった。
東芝自身はMSX2をもってMSX規格のパソコンの製造からは撤退したが、その後もMSX参入各社と共同開発した次世代チップのMSX-ENGINE2が、MSX2から最終規格のMSXturboRまでソニー製を除く各社のハードに搭載され続けた。MSX-ENGINEはパチンコ基板や東芝のワープロ『Rupo』などにも転用された為、その出荷数は自社MSXパソコンの出荷数を遥かに上回ったとされ、「MSXでいちばん儲けたのは東芝だ」と西和彦が言及したといううわさもあるほどであった。
脚注




